vol.1【料理研究家、フルーツハンター】丸山寛子さん

人材の声

「おいしいは、国境を越える。」

“食”を通じて人と人、地域と世界をつなげたい。
そんな想いで、全国の果物農家と向き合いながら、海外に日本の魅力を届け続けている人がいます。


今回は、“フルーツハンター”として、全国の果物農家を支援しながら輸出ビジネスにも取り組む丸山寛子さんにインタビュー。商品開発や海外展開にまつわるエピソードや、異業種人材の参画がもたらす新しい可能性についてお話を伺いました。


【プロフィール】

丸山 寛子(まるやま ひろこ)

  • 元会社員として社員食堂運営会社でマネジメントを経験後、料理研究家として独立
  • コロナ禍を機に、全国の果物農家とのネットワークを活かした商品開発や輸出ビジネスを展開
  • “フルーツハンター”として全国の果物の魅力を探求しながら、海外市場での日本食の可能性を追求している
  • おいしい日本、届け隊発の「江田畜産 株式会社 プロジェクト」に参画し、海外販路開拓支援


丸山さんは“フルーツハンター”というユニークな肩書きをお持ちですね。改めて現在の活動内容を教えてください


丸山さん(以下、丸山)
本業は料理研究家として活動していましたが、コロナ禍を機に仕事の方向性が大きく変わり、今は“フルーツハンター”として全国の果物農家に足を運び、PR支援や商品開発・輸出支援などを行っています。全国の果物農家さんとは以前から料理イベントや援農などで繋がりがあり、コロナによってリアルイベントの開催が難しくなったことをきっかけに、海外展開支援や商品開発の方面へシフトしました。



元々はどういったバックグラウンドをお持ちなのでしょうか?


丸山
最初は会社員として社員食堂運営会社のマネジメント部門で働いていました。でも、やっぱり“食べること”が好きで、もっと食に近い立場で仕事をしたいと思い、30歳のタイミングで退職。その後は料理研究家として独立し、食育の授業や料理教室を開催していたんです。全国の果物農家さんとも知り合いが多く、援農やイベントを通じて“食でつながる”関係人口づくりに取り組んできました。そこで培った人脈やノウハウが、今の海外展開支援にも活かされています。


もともと国内の活動をメインにされていたとのことですが、海外に目を向けたのはどんなきっかけですか?

丸山
大きなきっかけは、クラフトビール事業を手掛けた際、国内市場だけでの販売に限界を感じたことですね。ちょうどシンガポールで可能性を探っていたとき、現地の方から“日本の果物は味がいい”“もっと輸入したい”と高評価をいただきました。そこから『自分が応援している果物農家さんの魅力を海外に伝えたい!』という思いが強まり、海外展開支援を積極的に始めるようになりました。



海外展開を目指すうえで、どのように現地とのネットワークを構築されているのでしょうか? 


丸山
英語が得意でなくても大丈夫です。私自身も流暢とは言えないので、まずは海外の日本人が経営するコワーキングスペースをよく活用しています。そういった場所には日本人の方がいらっしゃることが多く、まずはそうしたコミュニティで情報交換をすることで、ネットワークが広がり、現地のバイヤーや物流会社を紹介してもらえることもよくあります。日本の食が恋しいのか、皆さんとても協力的です。

また、展示会に出展して現地のホテルやレストラン、スーパーなどの潜在的な取引先とつながることも大切です。農家さんが忙しくて現地に行けない場合は、私が代わりにサンプルを持参してテスト販売や試食会を行うこともあります。そうした“橋渡し”の役割が、私の主な仕事です。


やってみて良かったことを教えてください。


丸山
実際にシンガポールのバイヤーさんが日本の果物を「素晴らしい品質」と評価してくれたときは大きな励みになりました。日本の農産物が海外で通用する手応えを得たことで、自分自身のモチベーションが一気に高まりました。

また、SNSで「丸山さんが海外に行ってPRしているのを見て、うちも挑戦してみたい」と声をかけてくださる農家さんが増えたことも嬉しいですね。自分の行動が他の生産者さんの背中を押すきっかけになっていると感じます。


このお仕事を通じて、ご自身に変化はありましたか?


丸山
やはり海外展開をする上で、単純に美味しいだけではなく、投資面やマーケティング、現地とのコミュニケーションなど多角的な戦略が求められます。そのためには知識と経験を積むことはもちろん、生産者さんや異業種人材、行政など、多様な仲間との連携が不可欠です。日本の農産物は本当に魅力的な財産だと再認識したので、これからも積極的に海外へ伝える活動を続けたいと思っています。



現在はどのような課題に直面されていますか?


丸山
最大の課題は事業者の方々の意識を改革することです。たとえば、一流のホテルなどへの販売のチャンスがあっても、現地でのマーケティングリサーチ費用やプロモーション費用への投資に対し躊躇する方が多いのが現状です。海外展開では、商品自体の魅力を伝えるだけでなく、農家さん自身に『海外に挑戦する価値』を理解していただく必要があります。

また、展示会に出展して現地のホテルやレストラン、スーパーなどの潜在的な取引先とつながることも大切です。農家さんが忙しくて現地に行けない場合は、私が代わりにサンプルを持参してテスト販売や試食会を行うこともあります。そうした“橋渡し”の役割が、私の主な仕事です。


今後はどんなことに挑戦していきたいですか?


丸山
私自身扱える販路をもっと増やし、継続的に海外と取引できる仕組みを作りたいです。海外市場が単発の取引ではなく、農家さんにとって海外市場が継続的な取引の場として当たり前の市場になるようにしたいですね。
そのためにも、現地の文化やニーズに合わせたパッケージやレシピ提案など、よりきめ細かなサポートを充実させたいと思っています。


食の海外への挑戦に、どんな人材が求められていると思いますか?


丸山
たとえば、輸出に必要な貿易実務や事務サポートを担う人材は本当に不足しています。農家さんは畑や果樹園の農作業で手一杯ですから、輸送スケジュールの調整や輸出書類作成などをサポートしてくれる“リモート事務”の存在があると大きく前進します。
また、ITやデザイン、マーケティングなどはリモートでも対応可能な分野ですし、こうした専門スキルを持った人が国内外から参画できる仕組みがあるといいですね。『おいしい日本、届け隊』で人材募集を見て、気軽にトライできる環境が整えば、もっと多様なコラボが生まれるはずです。



最後に、これから『食×海外』に挑戦してみたいという方にメッセージをお願いします。

丸山
食はどんな業界の人にとっても身近なものですし、そこに少しでも“貢献したい”という思いがあれば、いくらでも関わり方はあります。一見難しそうに見えても、自分の強みや経験を活かせる領域が絶対あるはず。まずは一歩踏み込んでみると、新しい景色が見えてきます。
私自身、料理研究家としてのレシピ開発力や会社員時代のマネジメント経験が役に立っているので、皆さんもぜひ“異業種から参入”する面白さを味わっていただきたいですね!