
日本の農林水産物・食品の輸出はここ10年で2倍以上に伸び、政府も「輸出拡大」を後押ししています。こうした流れの中で、農業 × 輸出の仕事は急速に増えており、生産だけでなく、営業・貿易実務・マーケティング・物流など多様な職種があります。
「農産物の輸出に関わる仕事が知りたい」「未経験でも関われる職種はある?」「どんなスキルが必要?」といった疑問を持つ方もいるかと思います。農産物の輸出ビジネスは専門性が高いように見えて、事務・営業・マーケ・企画など他業種スキルを活かせる仕事が増加しており、副業での参画も広がっています。
この記事では、農業 × 輸出の仕事の種類、未経験でも挑戦しやすいポジション、必要なスキル、副業・プロ人材が活躍できる領域までをご紹介します。
1. なぜ今「農業 × 輸出」の仕事が増えているのか
国内市場の縮小と海外需要の高まり
日本は少子化・人口減少により、国内市場が長期的に縮小へ向かっています。
一方で、アジア・中東・欧米では「日本産の農産物」への評価が高まり、果物、和牛、抹茶製品、加工食品などの需要が年々増加。国内で売るだけでは伸びにくい時代に、海外市場が成長の突破口になっています。
実際、日本の農産物の輸出量は年々右肩上がりに成長しています。
【日本の農林水産物・食品の輸出額推移】
最新の政府統計(農林水産省)より、輸出額は 10年で約2倍以上 に伸びています。

出典 農林水産省 「農林水産物・食品の輸出実績」(2024年)
他にも鮮度を保つ技術(CA貯蔵、コールドチェーンなど)が発展し、果物・水産物・生鮮野菜など「輸出が難しい」とされていた商品も海外へ届けやすくなりました。物流ルートの多様化や航空便の拡充も、輸出ビジネスを後押ししています。
2. 農業 × 輸出で広がる主な仕事の種類
農産物の輸出ビジネスは、それぞれの工程に専門性の異なる仕事が存在します。ただ、特別なスキルがなくても行える業務も多く、他業界の輸出業務スキルも活かせます。ここでは実際の現場で求められている役割をいくつかご紹介します。
● 海外販路開拓・営業
海外バイヤーや卸業者、レストランなどに向けて営業・提案を行う仕事。現地ニーズのリサーチや商談、展示会対応も含まれます。
● 輸出実務(貿易事務)
インボイス作成、通関手続き、輸送手段の手配など、輸出に必要な実務全般を担当。貿易関連の知識が活きる領域です。
● 生産者コーディネーター
地域の農家や生産者団体と連携し、輸出するための量・品質管理を調整する役割。生産現場との橋渡し役です。
● マーケティング・ブランディング
海外市場に合う商品開発、デザイン、販促、SNS発信など、価値を伝える活動を担当。海外に広めるためのマーケティング・ブランディングが必要とされます。
● 物流・品質管理
鮮度保持、温度管理、梱包の改善など、輸出に不可欠な品質維持の仕組みを作る仕事。特に輸送中の農産物の鮮度維持が重要になります。
● EC・SNS運用
ECサイトやSNS販売、海外向けオンライン広告の運用などのデジタル領域での販売担当。英語はもちろん、展開する国・地域によっては多言語対応も必要です。
3. 未経験から関わりやすい仕事
農業 × 輸出は専門性が必要な仕事もありますが、未経験からスタートしやすい領域も多く存在します。
● 営業アシスタント・輸出事務のサポート
書類作成や問い合わせ対応、各国の法規確認など、実務で学びながらステップアップできます。
営業スキルについては下記記事でも解説しています。

● SNS発信・マーケティング
Instagram・TikTok・海外向けSNSの運用は、未経験でも始めやすい領域。特にクリエイティブスキルがある人は重宝されます。最近ではSNSのライブ動画配信で販促を行う事例も増えてきています。
● リサーチ・プロモーション(産地での調査・生産者取材等)
現場取材やレポート作成、産地の魅力発信はライター、動画編集者にもニーズがあります。国内販売はもちろん、海外販売でもどのような産地、生産者の商品なのかを分かりやすく伝えることで、購買意欲の向上につながります。
● デザイン・EC運用
パッケージ、商品ページ、LP制作などはスキルベースで仕事が広がります。海外の方に購入したいと思わせるデザイン作成、サイト構築は重要な役割です。
未経験でも、語学不問・リモート可の案件も増えており、関わりやすさは年々高まっています。
4. 輸出に必要とされるスキル
農産物の輸出ビジネスでは、専門性が高いイメージがありますが、必要なスキルは「一部の専門知識」と「汎用ビジネススキル」の掛け合わせです。現場で特に求められるスキルはこちらになります。
- 貿易の基礎知識(用語・流れ)
- 語学力
- コミュニケーション力・国内調整力
- Excelなどのデジタルスキル
- 取扱商品の理解(鮮度・品質の基準)
高度な専門性よりも“実務で使う基礎”を押さえることが、副業での活躍につながります。実務をこなしていくなかで身に付くスキルも多いので、ご自身ができる仕事からまずは挑戦していきましょう。
【出典】マイナビ「貿易事務に求められるスキル – 適性チェックリスト付き」
5. 副業・プロ人材が関わるケース
農業の輸出領域では、以下のような形で副業・プロ人材のニーズが増えています。
ここでは副業、プロ人材として活躍している方の事例をご紹介します。
フルーツハンターとして農家さんの輸出支援 丸山寛子さん
丸山さんは会社員でマネジメントを経験された後、料理研究家として独立。“フルーツハンター”としても全国の果物農家に足を運び、PR支援や商品開発・輸出支援をされています。コロナ禍で国内イベントが減ったことをきっかけに、農家の魅力を海外へ届ける活動にシフト。シンガポールで日本の果物が高く評価されたことが、大きな転機になりました。

現地では日本人コミュニティや展示会を通じてネットワークを広げ、農家に代わって試食会やテスト販売を行う“橋渡し役”として活躍しています。課題は、農家側の投資や海外挑戦への意識改革。今後は販路拡大や現地ニーズに合わせた提案を強化し、継続的な輸出の仕組みづくりを目指しています。
会社員時代に培ったスキルを活かし、農家さんの支援を行う副業の理想的な形。丸山さんは「”異業種から参入する”面白さを味わっていただきたい」と副業での参画をおすすめしています。
インタビュー記事はこちらからご覧ください。

「おいしい日本、届け隊」で副業人材を採用!
岐阜県を拠点に「日本産農産物を名実ともに世界一にする」を掲げ、国産食材のブランド確立・輸出拡大を進めるUmai Japanの杉本さん。事業を拡大するうえで専門的な人材の必要性を感じ、「おいしい日本、届け隊」で輸出に関する専門人材を募集しました。

「おいしい日本、届け隊」経由で多くの応募があり、2名を採用しました。1人はSNSマーケティング担当として、週1回の定例ミーティングでメンター的役割を担うほか、Instagram投稿も作成。もう1人は出荷管理表の作成やホームページ関連、英語通訳など幅広く対応し、輸出関連の別案件もサポートしています。
定期的な関わりだけでなく、必要なタイミングでスポット的に依頼できるのもありがたいと話す杉本さん。今後も「おいしい日本、届け隊」を通じて人材の募集を続けていくとのことです。
インタビュー記事はこちらからご覧ください。

農業 × 輸出の仕事は生産の知識がなくても挑戦できる領域が増えており、成長している市場です。
今後さらに需要が高まる分野なので、「農業に関わりたい」「地方の産業に貢献したい」「輸出に興味がある」という人にとってチャンスの多い領域と言えます。普段は一次産業に関わっていなくても、何か貢献したいという気持ちがある方は副業での参画にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
6.「おいしい日本、届け隊」官民共創プロジェクトのご案内
地方企業にとって輸出は成長のチャンスであり、人材活用はその鍵です。
農林水産省の 「おいしい日本、届け隊」 は、企業と副業・専門人材をマッチングし、輸出支援を通じて地方創生を支援しています。
「おいしい日本、届け隊」への登録は無料です。
輸出に挑戦したい地方企業の方、副業やプロ人材として参画したい方は、ぜひ以下よりご登録ください。
※本記事は関係者の取材・発言をもとに構成されたものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。
