副業マーケターが“輸出”で活躍するには?必要スキルと成功事例を解説

人口減少や国内市場の停滞が進む日本では、国内市場のみでの事業継続に限界を感じる農林水産物・食品の事業者が増えています。
近年、日本の農林水産物・食品の輸出額は右肩上がりに増加しており、その市場規模はますます拡大しています。特に、インターネットを通じて直接海外の消費者に届ける「越境EC」は、中小規模の事業者でも世界に挑めるチャンスを広げています。

しかし、海外に商品を届けることは、単に優れた商品があるだけでは成功しません。文化や商習慣、言語の壁を越え、現地の消費者に響くマーケティング戦略が不可欠です。そこで今、注目されているのが「副業マーケター」の存在です。

本記事では、副業で輸出マーケターとして活躍したいと考える方に向けて、輸出マーケティングの全体像や副業マーケターが担える具体的な役割、活躍するためのポイントまでを詳しく解説します。

目次
  • 1. 輸出でマーケティングが重要視される理由
  • 2. 副業マーケターが担える輸出分野の仕事
  • 3. 海外向けマーケ施策・事例
  • 4. 輸出マーケティング副業の始め方
  • 5. 活躍するためのポイント

1.輸出でマーケティングが重要視される理由は?

日本の農林水産物・食品の輸出額は12年連続で増加し、2024年には1.5兆円を初めて突破しました。
このような背景の中で、海外市場で成功するためにはマーケティングが不可欠で、マーケティングの重要性はますます高まっています。その重要性は以下の理由があります。

1-1. 消費者の購買行動の変化と越境ECの台頭

インターネットの普及とデジタルマーケティング技術の進展により、消費者は世界中の商品をオンラインで手軽に購入できるようになりました。この変化は、国内外のEC市場の拡大を促進し、日本企業の越境ECにおける海外需要の拡大にもつながっています。

まず、国内の電子商取引(EC)市場全体をみると、2024年の日本における消費者向けEC(BtoC-EC)市場規模は26.1兆円に達し、前年比5.1%増と引き続き拡大しています。

BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円) 

物販系分野の内訳では、「食品、飲料、酒類」が3兆1,163億円と最大規模となり、日常消費財分野を中心にECの利用が拡大していることがわかります。これは、食品・飲料・酒類カテゴリーが他の物販カテゴリーよりも高い成長率を示していることを示しています。こうした動きは、消費者がオンラインでの日常生活関連商品の購買をますます活発化させていることの表れです。

一方で、越境EC市場も着実に成長しています。経済産業省の調査によると、日本と米国・中国の3か国間における越境EC市場規模は引き続き増加しています。特に中国の消費者による日本事業者からの越境EC購入額は、前年度比約8.5%増の約2兆6,372億円に達しており、日本製品への海外消費者の需要が高い水準で推移しています。米国からの購入額も同様に増加傾向です。

このように、国内市場の成長と越境ECの拡大が並行して進む中で、日本企業が競争力を高めるには、現地消費者が商品を発見して購入するまでのプロセスをデジタルマーケティング、現地言語対応、決済・物流面で最適化することが重要です。

出典:経済産業省|令和6年度電子商取引に関する市場調査2月

1-2. 信頼性醸成とブランド構築

海外市場において日本の農林水産物・食品のブランドを確立するためには、単発的なプロモーションだけでなく、継続的な情報発信と信頼性の醸成が必要です。商品の安全性や品質、生産者のこだわりなどを適切に伝え、ファンを増やしていくための戦略的なマーケティングが求められます。

2.副業マーケターが担える輸出分野の仕事

輸出マーケティングは多岐にわたりますが、副業マーケターとして専門スキルを活かせる分野は豊富にあります。

2-1. デジタルマーケティング全般

越境ECの拡大に伴い、デジタルマーケティングの専門家は特に需要が高まっています。

  • 海外向けSNS運用代行
    Instagram、Facebook、TikTokなど、ターゲット国の主要SNSアカウントの開設・運用、コンテンツ企画、投稿作成、効果測定。
  • Webサイト・ECサイトの多言語化・SEO対策
    英語、中国語(繁体字・簡体字)、その他ターゲット国の言語への翻訳、海外向けのSEOに加え、AI検索の対応によるコンテンツの最適化。
  • 海外向け広告運用
    Google広告、Facebook広告、Instagram広告など、ターゲット国のオンライン広告プラットフォームでの広告キャンペーンの企画・運用・効果測定。
  • コンテンツマーケティング
    ターゲット国の文化や嗜好に合わせたブログ記事、動画コンテンツ、インフォグラフィックなどの制作・配信。

2-2. 市場調査・戦略立案

輸出を検討している企業にとって、現地の市場や競合に関する情報は非常に重要です。

  • 海外市場調査
    ターゲット国の食品トレンド、競合商品の価格帯、消費者の購買意欲、流通チャネルなどのリサーチ。
  • ターゲット選定・ペルソナ設定
    調査結果に基づき、具体的なターゲット層を特定し、その国の消費者の特性を深く理解したペルソナ(顧客像)を構築。
  • マーケティング戦略の提案
    調査結果とペルソナ設定に基づき、どのようなチャネルで、どのようなメッセージで、どのような商品を、どのような価格で展開していくか、具体的な戦略を提案。

2-3. クリエイティブ制作

視覚的な訴求は、海外の消費者に商品をアピールする上で非常に効果的です。

  • 多言語キャッチコピー作成
    ターゲット国の文化やニュアンスを理解した上で、商品の魅力を最大限に引き出すキャッチコピーの作成。
  • 商品写真・動画撮影ディレクション
    現地の消費者に響くような、商品の魅力を伝える写真や動画コンテンツの企画・ディレクション。
  • パッケージデザイン
    ターゲット国のデザイントレンドや規制を考慮した、魅力的なパッケージデザイン。

出典:「おいしい日本の届け方」P66-86

3.海外向けマーケ施策・事例

海外市場への展開では、商品力だけでなく売り方・伝え方をどう設計するかが成果を左右します。

一方で、海外向けECやブランディング、情報発信までをすべて社内リソースで担うのは難しいのが実情です。

そこで近年、副業・業務委託人材をプロジェクト単位で活用し、必要な専門性を機動的に取り入れる手法が注目されています。

以下では、そうした外部人材の活用により、事業推進のスピードと柔軟性を高めてきた事例を紹介します。

3-1.副業人材マーケティング支援事例

和牛の一貫生産にこだわり、高品質な国産牛肉を提供し続けてきた江田畜産。
生産者としての強みを活かしながらも、販路拡大やブランド価値向上においては「社内リソースだけでは限界がある」という課題を抱えていました。

そこで同社では、正社員の増員ではなく、マーケティング・営業領域に強みを持つ副業・業務委託人材をプロジェクト単位で活用
ECや直販の設計、ストーリー設計、情報発信の整理など、必要な専門性を期間・役割ごとに取り入れることで、事業検証と実行のスピードを高めていきました。

副業人材の活用により、現場の負担を最小限に抑えつつ外部視点を取り込み、「生産に集中しながら、売り方・伝え方をアップデートする」体制づくりを実現した事例といえます。

3-2.マーケターの副業参画モデル

昔ながらの木桶造りにこだわり、国産原料の丸大豆・小麦を活かした天然醸造を続けてきた栄醤油

同社では、2028年までに生産量を現在の2倍に拡大する計画を掲げ、海外販路の本格的な開拓に向けて体制づくりを進めてきました。

その際に選択したのが、正社員の急拡大ではなく、海外営業・マーケティングに強い副業・業務委託人材をプロジェクト単位で迎え入れる方法でした。

実際には、
・欧州在住の副業人材が現地レストランを回り、市場調査やヒアリングを担当
・デジタルに強い人材が、ディストリビューター候補の整理や商談準備を支援

といった形で、それぞれの専門性を活かしながら実務に並走
加えて、事業計画の優先順位整理や次の打ち手の壁打ち役としても機能し、意思決定と実行のスピード向上につながりました。

必要な知見と機動力を、期間・領域を区切って取り入れることで、試行錯誤を重ねながら海外展開を前に進めた事例といえます。

4. 輸出マーケティング副業の始め方

マーケティングの副業を始めるには、正しい順序で準備を進めることが大切です。
準備が不十分なまま案件に応募しても、スキルや実績が伝わらず、採用につながりにくくなってしまいます。
以下の4つのステップを参考に、段階的に進めてみてください。

ステップ1:学習してスキルを身につける

まずは、Webマーケティングの基礎知識を学びましょう。
独学であれば、書籍や動画教材、オンラインスクールなどが主な学習手段になります。

SEO、SNS運用、広告運用、コンテンツ制作など、自分が取り組みたい分野をある程度絞って学ぶと、効率よくスキルを身につけることができます。


ステップ2:実績(ポートフォリオ)を整理する

スキルを学んだら、客観的に「できること」が伝わる実績を作りましょう。
学習しただけではスキルの証明にならないため、自分でブログやSNSアカウントを運用してみるのがおすすめです。

こうした運用経験や成果をまとめたものが、案件応募時に活用できる「ポートフォリオ」になります。


ステップ3:案件を探してみる

実績が整ったら、いよいよ案件探しに進みます。初心者の方は、クラウドソーシングサイトを活用すると探しやすいでしょう。最初は「未経験者可」や業務範囲が限定された案件から挑戦し、少しずつ経験を積んでいくのがおすすめです。


ステップ4:PDCAを回し、単価を上げていく

案件を受注したら、全力で取り組むことはもちろん、納品して終わりではなく、成果や改善点を振り返ることが重要です。

クライアントからの評価やフィードバックを次に活かし、実績を積み重ねていくことで、徐々に単価の高い案件にも挑戦できるようになります。

出典:MOREWORKS「未経験でもOK!Webマーケティング副業の始め方を解説

活躍するためのポイント

副業マーケターとして輸出分野で活躍するためには、以下のポイントを意識しましょう。

各国の文化や商習慣を尊重し、現地のニーズに合わせて柔軟に戦略を調整する姿勢が求められます。

海外の市場トレンドや競合情報を常にキャッチアップし、戦略に反映させることが重要です。

現地のパートナーや顧客との円滑なコミュニケーションは、プロジェクトを成功させる上で不可欠です。

マーケティング施策の効果を定量的に分析し、改善サイクルを回すことで、より効果的な戦略を構築できます。

英語はもちろん、ターゲットとなる国の言語を学ぶことで、より深いコミュニケーションが可能になります。

まとめ

日本の農林水産物・食品輸出は拡大を続けており、越境ECの普及によって、中小規模の事業者でも海外市場に挑戦しやすい環境が整いつつあります。一方で、海外市場で成果を上げるには、商品力だけでなく、現地に伝わるマーケティング設計が欠かせません。

本記事で紹介したように、デジタルマーケティングや市場調査、戦略立案、クリエイティブ制作など、マーケターの専門スキルが活かせる場面は多く、副業・業務委託人材を活用することで、事業検証や意思決定のスピードを高めている事例も増えています。

マーケティング副業は、小さな業務から関わり、実務に並走しながら価値を提供していくことがポイントです。こうした関わり方は、輸出分野に限らず、今後のマーケターの働き方としても示唆に富んでいます。

そのうえで、日本の食の魅力を世界に届けたい事業者と人材をつなぐ場として、おいしい日本、届け隊のような取り組みもあります。輸出マーケティングに関心のある方は、情報収集や関わり方を検討する際の一つの選択肢として活用してみてはいかがでしょうか。

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※本記事は関係者の取材・発言をもとに構成されたものであり、記載内容は執筆者または取材対象者の見解によるものです。農林水産省の公式見解や方針を示すものではありません。